医療法人設立

医療法人の設立には、申請当初から法人クリニックの開設まで短くとも半年程度の期間が必要になります。医療法人化をお考えの先生は、早目に確実なアクションをとることが重要です。 また、申請書は審査のポイントをきちんと踏まえて適切に作成することが大切ですが、その後の実務的な運営面への影響を予め考慮してメリットを最大限に生かす方法を選択しなければなりません。
医療法人化した方がいいのかしない方がいいのか、徹底したシミュレーションや先生のお考えなどを考慮しご提案させていただきます。

医療法人化のメリット

1. 節税

売上が5,000万円以上ある方につきましては、節税の面で有利になる場合が多いことから、医療法人設立を検討されることをおすすめします。
 

2. 保険の活用

個人開業医の場合、保険料は最高12万円までしか経費として認められません。
保険の種類にもよりますが、医療法人であれば支払った保険料の半分程度は経費として計上することができるようになります。
 

3. 退職金の支払い

医療法人から給与を受けている院長および、そのご家族に退職金を支払うことができるようになります。
また退職金に対する課税はほかの所得と比べて優遇されているので、引退時に退職金としてまとめて受け取ることで、節税効果を生み出すことも可能です。
 

4. 事業承継

個人開業医ではお子様などの相続人に事業承継する場合、一度診療所を廃止し、相続人が新たに診療所を開設しなければいけませんが、医療法人であれば新たに理事長を選任するだけで事業承継することが可能です。
 

5. 社会的信用の向上

医療法人を設立することで、金融機関などからの信用を高めることができます。
 

6. 相続税対策

理事長の出資金を生前のうちにご家族で贈与するなどの方法により、相続税対策を図ることが可能となります。
 

医療法人化のデメリット

1. 残余財産の分配禁止

出資持分のない医療法人が解散した場合、残余財産は国、地方公共団体または他の医療法人などに没収されるため、個人への分配を行うことができなくなります。
 

2. 社会保険への強制加入

医療法人となることで、個人開業医の時には任意であった厚生年金などの社会保険への加入が強制となります。なお医師国保は引き継ぐことが可能です。
 

3. 剰余金の配当禁止

余剰金とは、イメージとしては「医療法人にたまっていく現預金」を指します。
医療法人ではこの余剰金の配当が禁止されているため、院長などの出資者に配当という形で支払うことはできません。
そのため余剰金は、新たな設備投資や退職金の支払いなどの原資として使用することとなります。
 

4. 法人と個人のお金の分離

個人開業医の時には経営上のお金と個人のお金が曖昧であっても許されていましたが、医療法人ではそれらを明確に分離させなければいけません。
つまり、より細かな点にまで「お金の管理」が求められるようになるということです。
 

5. 接待交際費の上限

個人開業医の場合、事業として認められれば全額を経費として計上することもできましたが、医療法人では年間800万円までしか経費として計上することはできません。
 

6. 事務手続きの増加

医療法人設立に伴い、毎年必要な手続きとして、
「所轄税務署へ法人税の申告書提出」
「決算終了後3ヶ月以内に、各都道府県か所轄厚生局に事業報告」
「資産総額の登記」
また2年ごとに必要な手続きとして、
「理事長重任の変更登記」
「各都道府県への役員変更届の提出」
などが加わります。
 

医療法人化の流れ

1 【医師会へ医療法人設立の意思表示を行う】
2 【医療法人設立説明会】
 都道府県により説明会、事前相談会が行われます。
3 【設立総会を開催】
 発起人全員で設立総会を開催し、設立する医療法人の基本的事項の決定や、議事録の作成を行います。
4 【設立認可申請書の作成・提出(仮受付)】
 一般的に年2回の受付となりますが、締切は各都道府県によって異なります。
5 【設立認可申請書の審査】
 代表者へのヒアリングも行われます。
6 【設立認可申請書の提出(本申請)】
7 【医療審議会での諮問】
 医療法人設立の認可について審議が行われます。
8 【医療審議会からの答申】
 医療審議会から、医療法人設立を認可するとの答申が行われます。
9 【都道府県から設立認可書の交付】
10 【設立登記申請書類を作成・申請】
 医療法人認可後、2週間以内に管轄の法務局で登記を行います。
11 【設立登記完了】
12 【登記完了届の提出】
 登記完了届、また登記簿謄本を各都道府県、または保健所に提出します。
13 【出資金の払込み】
14 【所轄税務署への手続き】
15 【都道府県税事務所・市区町村役所への手続き】
16 【所轄保健所への各種届出】
17 【社会保険事務局、または社会保険事務所への各種届出】
18 【関係官公署への事業開始に伴う各種届出】